コラム
2025.07.07

小数の計算の落とし穴(3)

小学5年生になると、いよいよ「小数×小数」の計算が登場します。

例えば、3.8×1.2 のような計算です。

ここで、子どもたちは大きな戸惑いを覚えます。なぜなら、これまでの「小数点を揃える」という考え方ではうまくいかないからです。

「小数×小数」の筆算では、以下のように指導されます。

  1. まず、小数点を意識せずに、右に揃えて書きます。ここまでは「小数×整数」と同じです。
  2. 整数のかけ算と同じように計算します。38×12  の計算で、456 という積を求めます。
  3. ここが重要なポイントです。積の小数点は、かけられる数とかける数の小数以下の桁数を合計した数だけ、右から数えて打つ、とルールが変わるのです。

 

例として、3.8×1.2 を見てみましょう。

  • 3.8 は小数第一位まで(小数以下の桁数:1桁)
  • 1.2 も小数第一位まで(小数以下の桁数:1桁) 

この小数以下の桁数を合計すると 1+1=2 桁になります。したがって、456 の右から2桁目に小数点を打つため、答えは 4.56 となります。

筆算の例:

           3.8
     × 1.2   
           7 6 
       3 8      
       4.5 6

なぜ、ここでつまずくのでしょうか?

この「小数×小数」で多くの子どもがつまずく主な理由は、これまでの学習とのルールの違いです。

たし算・ひき算、そして「小数×整数」と、一貫して「小数点の位置を揃える」という視覚的に分かりやすいルールで計算してきたため、突然「小数以下の桁数を数える」という抽象的なルールに変わることに混乱を覚えるのです。

さらに深刻な問題として、新たなルールを覚えたことで、以前に学習したルールを混同してしまうことがあります。

そうならないためには、一つひとつのルールを確実に定着させるための訓練が不可欠なのです。

 

<了>